あなたと話がしたいから 〜茶座荘の日常〜 7

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 都心から30分ほどの山沿いに建てられたシェアハウス、茶座荘(さくらそう)の1階に作った事務所兼喫茶室である《茶座(さくら)》に、可愛らしいロボットが運び込まれた。80センチくらいの高さで、見た目はペンギン? のような可愛らしい見た目で、持ってみると意外と軽い。デジタル表示されている目はクリっとしていて、瞬きをしている。 「これ……何ですか?」  俺、この家の主である佐倉(さくら)浩介(こうすけ)はこれを持ってきた同僚の窪田(くぼた)保人(やすひと)さんに聞いてみた。 「知り合いから預かった見守りロボットなんだ。ここでサポートしている高齢者の人達にお試しで使ってみてほしくて」  ここ、株式会社『FREE TALK』での主要業務の1つに、近所に住む高齢者のサポート業務がある。と言っても大したことはしてなくて、1人じゃ運べない大量の買い物に付き添ったり、庭のお手入れをしたり。1つ1つは些細なことだけれど重宝してもらっている。そんな人達の家に置いてほしいと言われているのが、この見守りロボットだ。 「これは一人暮らしの高齢者向けに作られたものなんだ。熱センサーで体温検知できるし、脈の測定と血圧検査ができる機能も内蔵されている。他にも、健康状態を管理するための機能が色々搭載されていて、離れて暮らす家族にその情報を連携することができるんだ。 さらにこれの凄いところは、AIが搭載されていて簡単な会話ができるし、一緒にいる時間が長くなればロボット自体が学習していつもと違う行動や様子が見受けられたらそれも報告してくれるらしい。まだ開発中なんだけどお試しで使ってみてほしいと言われてるんだ。どうかな」  窪田さんは過去に色々な職を転々としているらしくその1つの電機メーカーで一緒だった元同僚に頼まれたらしい。俺達の仕事を聞いて、高齢者へ試験的に使ってみてくれないか、という依頼らしい。
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