十七 男子寮では良くあること

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十七 男子寮では良くあること

 ドクドクと心臓が鳴る。俺はもしかして、判断を誤ったのだろうか。だとしても、あとに引くことは出来なかった。  緊張で震える指で、栗原のスラックスのボタンを外す。爪がボタンにカツカツと当たって、なかなか外せない。栗原が、じっと見つめてくる。 「……っ」  はぁ、吐息を吐き出し、吹き出る汗を甲で拭った。 「は、外したぞ」  これで良いだろ? と目線で問いかけると、栗原がプッと笑い声を漏らした。 「鈴木先輩、本気で言ってる?」 「うぐ」 「……じゃあ、見本、見せてあげる」 「あ」  栗原の手が、俺の部屋着のズボンをずらす。脱がされることの恥ずかしさに、耳が熱くなった。そのまま栗原は下着に手を伸ばし、やけに静かに下ろし始めた。 「……ん」  カァと、頬が熱くなる。焦らされているようであり、もどかしくある。やがてゆっくりと下着を膝まで下ろすと、栗原が耳許に甘い声で囁いた。 「先輩も、して」 「……っ」  くそ。栗原のやつ、絶対にからかってる。  全部放り投げてふて寝したい気持ちにもなったが、もし止めたりしたら栗原が他の誰かと慰め合うのかと思うと、止めるるわけにはいかなかった。  何故だか、そういう気になった。 「……」  すぅ、と息を吸い込み、ファスナーにてを伸ばす。チチと小さく金属が擦れる音を立て、ファスナーを下ろす。スラックスの向こうに、すでに主張している栗原の性器が覗いて、ドキリとした。  体温を感じそうなほど、膨れ上がった性器に、思わず目を逸らす。栗原が急かすように肩をつつくので、直視しないように目線を外して、栗原の下着に手を掛けた。 「先輩、恥ずかしいの?」 「……当たり前だろ」 「一緒にお風呂入ってるのに」  語弊のある言い方をするな。大浴場で一緒に入っても、他人のモノなんか見ないのがマナーだ。当然、まじまじと見たことなんかない。  ムッと唇を結んで、ゆっくり下着を下ろす。解放された欲望が、ぶるんと剥き出しになって揺れ動いた。 「っ……」  思わず、視線をやってしまって、慌てて顔を背けるのを、栗原が顎を掴んで引き寄せる。 「っ、おい」 「先輩、見て」 「お前、な」 「先輩のも、興奮してるね」  栗原の指先が、チョンと俺の性器に触れた。それだけでビクッと身体が震えて、逃げ腰になる。 「あっ」 「ダメだよ、先輩。逃げちゃ」 「っ――……」  羞恥心から栗原を睨むが、栗原は嬉しそうに笑っている。本当に、気が変になりそうだ。 「触るね、先輩」 「あっ……ん」  きゅ、と軽く握られ、ぞくりと背筋が粟立つ。さわさわと撫でるように触れる感触に、次第に熱が高まっていく。 「あ、は……っ」 「先輩も、俺の触って」 「っ、ん……」  ドキドキしながら、栗原のに触れる。既に、硬く反り立って、誇張している。 (硬……)  栗原の顔が近い。目蓋を軽く伏せた綺麗な顔を見る。睫毛、長い。肌、綺麗だ。 「はっ……、栗、原……」 「こっち、寄せて」  ぐいと身体を引っ張られ、下半身を密着させられる。互いのモノが触れる感触に、ビクンと肩が揺れる。 「っ、栗原っ……それっ……」 「気持ちイイ? 先輩」  掠れた声で聴かれて、ゾクゾクと背筋が震える。互いの粘液が混ざり合い、敏感な部分を擦りつける様は、視覚情報で俺の脳を焼き切らす。快感と興奮に震えながら、見るのを辞められない。ぐちぐちと二つの性器を弄る栗原の手が、濡れた性器が、いやらしい。 「あ、あ……、あ……」  ゾク、ゾクと、小刻みに身体を突き抜ける快楽に、脳内麻薬が分泌されているみたいだ。だんだん麻痺してきて、されるがままになっていく。  栗原は片方の手で性器を弄りながら、もう片方の手を俺の背に回した。ぐっと身体を近づけさせられ、殆ど抱き合いながら互いの性器を擦り合う。 「んっ、ん……、は……っ」 「先輩……、鈴木先輩……っ」  栗原の呼吸も荒い。白い肌が赤く染まっている。栗原も感じていると思うと、余計に興奮した。 「栗原……っ」  名前を呼び合いながら、ビクビクッと震える。栗原の精液が、俺の太腿を濡らした。同時に、俺の性器からも精液が吐き出され、栗原の手の中に受け止められる。 「あ、あっ……!!」 「っ……」  ハァ、と息を吐き出し、互いの身体にもたれかかる。気怠い快感に、ぶらりと手を下す。二人とも体温があがって、くっついている身体が火照って暑かった。服さえ湿っぽくなった気がする。 「……」  しばらく息を整えるようにそうやってもたれかかっていた。だんだんと冷静になって気恥ずかしさが戻ってくると、今度はどうやって離れようかとソワソワし始める。こういう時間は、なんとも気まずいものだ。  そうしているうちに、栗原の指がヌルヌルした粘液を放ったばかりの性器に擦りつけ始めた。 「っ、お、いっ!?」 「……先輩」  栗原が視線を上げる。おねだりするような甘い顔で、俺をじっと見つめた。ごくり、喉を鳴らす。指はその間も、くちくちと俺の性器を優しく触っている。 「もう一回、しよ」 「――」  唇が触れ合いそうな距離で、熱に浮かされた瞳で強請られて、断れるはずは、なかった。
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