三十九 えっちだ……!

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三十九 えっちだ……!

 パサ。という衣擦れの音を立てて、シャツをはだけさせられた。外気に触れた肌が、ざわりと震える。顔が熱い。心臓がバクバクする。風馬の視線を感じた肌が、チリチリと痺れる気がした。サイドテーブルに置いたコーヒーが気になったけれど、言うのは野暮すぎる。俺だって、空気くらい読める。 「一太先輩……」  ちゅ、と音を立てて、風馬の唇が鎖骨に触れる。風馬が触れた個所が熱を持ったように熱くなる。ビクビクと小さく身体を揺らしながら、甘い愛撫に瞳を閉じた。 「んっ……、は……っ」  吐息を漏らす。風馬の触れる箇所が、すべて甘く蕩けていくようだ。  風馬の手が肌を滑る。鎖骨にキスマークを残して、唇が徐々に下へと下がっていく。胸を滑り、その中心の突起を、唇が食む。舌先でいたずらに先端を弄られ、ぞくぞくと背筋が粟立った。 「あっ、あ……ん」  舌先で転がされ、乳首がツンと勃って存在を主張する。こんな風に触れられることは、正直まったく慣れていないのだが、嫌じゃない自分がいて、自分自身に戸惑う。風馬に触れられるのが、嫌じゃない。むしろ、ちょっと好き寄り。 (あたま、ふわふわする……)  敏感な先端の部分を念入りに弄られ、じわじわと熱が浮き上がる。ちゅと音を立てて吸われ、ビクンと身体が跳ねた。 「あっ!」  思いのほか大きな声が出て、咄嗟に口を塞ぐ。 「ふ、風馬っ……、あんま……、虐めない、で……」 「……先輩、煽ってます?」 「あおって、な」 「やっぱ、煽ってる」  ちゅ。胸にキスを落とされる。赤い花が咲く肌に、ドキドキと心臓が鳴った。誰かに、こんな風に扱われた経験は皆無だ。風馬といやらしいことをしていたと思っていたが、とんでもない。 (もっと、エッチだった……!)  互いに処理をするような関係でも、興奮したと言うのに。こんな風に丁寧に愛撫されるのが、恥ずかしいし、気持ち良いし、興奮して、頭がおかしくなりそうだ。まともに、風馬を見られない。風馬はいつもよりずっと色っぽくて、目に毒だ。  風馬はしばらく乳首を弄んでいたが、やがて唇を離し、そのままさらに下へと滑り落ちていく。俺はといえば、ようやく解放され、ホッと息を吐いた。乳首の先端がジンジンする。 「可愛いお臍」 「くっ……お前、なっ」  腹部にキスされ、恥ずかしさに顔が熱くなる。風馬と違って、引き締まった身体などしていない。そのあたりは触れないで欲しい。 「先輩、下も、脱がせて良い?」 「っ……っと、す、好きに、したら……」  お伺いを立てられるのは、かなり恥ずかしい。敢えて確認しないで欲しい気持ちもあるが、風馬が俺を怖がらせないようにしているのは解っているので、そんなことも言えない。もしかしたら言わせたいだけかも知れないけど。 「あ……」  するりとズボンと下着を脱がされ、シャツだけにされる。反応を見せる性器を風馬の目線から隠したくて、さりげなく足を組む。風馬は一度身体を離し、自分も上を脱いだ。美しい肉体を惜しげもなく晒す風馬に、思わず喉を鳴らす。 「っ……」  緊張する。興奮する。脳内麻薬が分泌されているようだ。 (俺、エッチ、しちゃうのかな……)  ドクドクと、心臓が鳴る。まだ心の準備は出来ていない。けど、風馬は多分、俺としたいのだろう。 「ふ、風馬……あの……」 「ん?」 「その……」  不安を滲ませる俺に、風馬がフッと笑う。 「怖がんないで、先輩……。大丈夫だから」 「う、うん」  少しだけ緊張を解いて、風馬を見る。自然と唇が重なり、何度も舌を絡め合う。こんなキスしておいて、最後までしないなんて出来るんだろうか。風馬のことは信用しているけど、それでも少しだけ不安だった。 「一太先輩、ベッド行こう」  耳元で囁かれる声に、脳が破裂しそうだった。 (えっちだ……!)
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