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タイムリミット
「私の役目は本家の結界を維持することの他にもう一つござります。それは次の『結界守』を産むこと」
いよいよ夜伽の儀に話が近づき、倭は再びクイッと盃を空にした。
「結界守はその身に吸い取った穢が体に巣くうと足の方から黒変し徐々に石化していきます。この石化が心の臓に達すると死に至ります」
死という言葉に倭はビクリと体を揺らした。
「私を産んだ2年後に、母の石化が心の臓に達しました。
生まれた子は月のものが来るまでは石棺に入ることはできませぬ。石棺が開いたとき、すぐ子を為せるようにするためです。
私が子を為せる身体となるまで、母は死してなお本家に結界を張りつづけねばなりませんでした」
「死してなお……結界を?」
眉をひそめる倭に命様は頷く。
「結界守は『自分の命を移動させる能力』を持つのです。我らが『命様』と呼ばれる所以にございます。この力で結界守は死の間際になると自らの首に命を移します。
そして邪気で石化した体から、穢れの達していない首のみを斬り落として石棺に封じるのです。
石棺の中では時が止まっておりますゆえ、結界守の命を宿した首は朽ちることなく、本家に結界を張り続けることができるのです」
「結界守がそんなことを!?」
衝撃的な話に倭は目を丸くする。
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