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名前を呼んで
「それなら『お館様』というのは俺に与えられた役割の名ということになるのでしょうか?」
倭が問えば、千夜はフフッと笑い声を立てた。
「そうですね。これからは『お館様』ではなく『倭様』とお呼びいたしましょう」
突然の提案に倭は驚いて返事に窮した。
「ですからどうか私のことは『千夜』とお呼びくださいまし」
そう言って、千夜は倭の大きな右手に頬を擦り寄せた。
「この身に課せられたお役を果たすため、我らは巡り会いました。ですが倭様をお慕いするこの心は、お役目からではなく真に私のものにございます。『結界守』としてではなく『千夜』として、倭様に私を受け入れていただきとうございます」
「千夜……」
倭は千夜の体を引き寄せそっと口付けた。
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