誓い

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誓い

 御簾ごしに朝日が差し込む。 腕の中に閉じ込めた白い身体が規則正しい寝息を刻んでいる。  安堵に緩みかける心を倭は意識的に引き締めた。 (本家当主として、隠密機動隊の長として……俺は鬼を斬らねばならない。だが鬼を斬れば千夜の命は削られる。  俺の腕の中で眠るこの愛しい人が穢に侵され朽ちる姿を思えば心の臓が凍りつきそうだ)  朝日の差し込む寝所の中、倭は千夜の体温を感じ白い柔肌に指を添える。  生身の彼女は儚く、その生命は何よりも尊い。  倭は幼き日の蔵を思う。絶望に耐えかねて逃げ込んだあの真っ暗な蔵の中で、倭は朝日のように温かい千夜の神力に救われた。  今度は俺が救う番だ。 考えろ。なにか方法があるはずだ。絶対に俺は、千夜を真っ暗な絶望の中で一人死なせたりはしない。   「千夜……あなたのためなら俺はきっとなんだってできる。奈落に飛び込みこの世の邪気を全てなぎ祓ってでも、あなたを必ず救ってみせる」  倭は心の中で決して揺らぐことのない赤い決意の炎を燃やした。
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