石棺守の東雲

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石棺守の東雲

 強固な結界を抜け、60を過ぎた小柄な着物姿の女性と20代半ばの孫娘が屋敷の敷居をまたいだ。 「石棺守(せきかんもり)東雲(シノノメ)キヨ及び東雲奈津(ナツ)、馳せ参じました」  玄関先でキヨと名乗った老婆が来訪を告げると、出迎えた袴姿の男性は相好を崩した。 「良くぞ参られた! 本家世話役・松平(まつだいら)定範(さだのり)と申す」  定範はさっそく二人を本殿へと通した。 「お館様にご挨拶申し上げます」  キヨと奈津は広間の上座に座った25歳の若き当主に平伏する。 「78代 織田家当主、織田(おだ)(やまと)だ」  奈津とは同じ年頃のはずなのに、倭の圧倒的な存在感に射すくめられる。  涼やかな切れ長の黒い瞳を直視できず、奈津は両手をついたままじっと床に視線を這わせていた。
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