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隠密機動隊
定範は二人に茶を勧めつつ、現状を語りだした。
「人の心に巣くう怒り恨み妬み嫉み。これら瘴気が溜まると邪道に通じてこの世に鬼裂を生じさせる。
この鬼裂が開くと、奈落から大量の邪気が放たれ鬼童を生み出す。鬼童に取り憑かれた人間は鬼となリ、災いを招く……
200年の沈黙を破り、ここ数年で巷の瘴気が濃くなってきておるのだ」
キヨと奈津はそれを聞いて表情を強張らせた。
「すでに五人の守護役を各地より呼び寄せ有事に備えてはおるが、万が一鬼が現れれば石棺の封印を解き『命様』に現し世へとお出ましいただかねばならぬ。さすれば石棺守であるそなたらの力添えが必要となる」
「心得てございます」
キヨは板間に手をつき深く頭を下げた。
「おぉそうだ。この者らが今世において守護役を務めておる」
定範が下座を指し示し、一人ずつ名を呼んだ。
「武田家守護役、武田理人」
整った顔立ちのスラリとした美男子が頭を下げた。茶髪にピアスをした今風のイケメン、年の頃はご当主樣と同じくらいだろうか。
「同じく真田雪乃」
真っ直ぐな黒髪を肩で切り揃えたクールビューティ。理人とは真逆の優等生タイプに見える。
「今川菜々花」
ふわふわのくせ毛を肩口で一つに束ねている。まだ十代と思しき少女は名を呼ばれ恥ずかしそうに真っ赤になっている。
「島津高良」
まるで相撲取りのような巨躯だが、太い眉の下の小さな目はとても優しい。
「伊達右京」
まだあどけない少年が名を連ねていることに奈津は驚く。中学生くらいだろうか?
「この者たちがお館様と共に鬼を斬る今世における『隠密機動隊』の面々である!」
定範は誇らしげに五人を紹介した。
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