予兆を感じ取る

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予兆を感じ取る

 定範は東対にある蔵へキヨと奈津を案内した。  石造りの蔵の鍵を開けると意外にも清涼な空気が流れ出す。  大きな蔵の最奥には黒大理石の棺が置かれていた。  巨大な棺からキヨは静かな波動を感じとった。 「(みこと)様もすでに外界の乱れにお気づきのご様子。お目覚めのご準備に入っておられます」 「平時は石棺の中から本殿の結界を張ってくださっている命様がお出ましになるということは、隠密機動隊が鬼童を倒しきれずに鬼の出現を許してしまうことを意味する」 「はい。鬼の邪気は強く、命様直々にお浄めを頂く必要がございますから」 「命様は、もはや今世での鬼の復活は避けられぬとお考えなのか?」 「お目覚めの準備に入られているということは左様にありましょうな……」  老練の二人が揃ってため息をつくと、突然本殿が騒がしくなった。 「定範様! 鬼裂が出現致しました!」  家臣の報告に定範は顔色を変える。 「キヨ殿はこちらでご準備を」  そう言い残し、定範は慌ただしく本殿へと駆け戻っていった。
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