60人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
目覚めの儀
隠密機動隊の活躍は目覚ましく、短時間で鬼裂を塞ぐことには成功した。
しかし鬼裂は老人施設の居住区に開いており、倭たちが現場に到着したときには既に20人ほどの入所者が鬼童に取り憑かれて鬼となってしまっていた。
「初陣から鬼を出してしまいました……」
落ち込む菜々花と右京。
「あんなのどうやって防げって言うんだよ!」
荒ぶる理人。
「地震予知システムみたいに鬼裂が入る前に探知できるシステムとかできないのかしら?」
分析する雪乃と黙する高良。
「ひとまず皆、ご苦労だった!」
守護役たちを労いつつも、定範は粛々と倭に進言した。
「鬼の出現が認められましたので、これより命様の『目覚めの儀』を執り行います」
倭は硬い表情で頷いた。
「結界守の命様は『生命』を司る巫女様でもある。結界を張って本家を守りつつ、穢をも浄めてくださる尊いお方だ。くれぐれも失礼のないように!」
本殿から続く渡り廊下を歩きながら定範は理人らにコンコンと言い聞かせている。
「こちらが石棺の間である」
ひんやりとした石造りの蔵には松明が灯され、何やら神秘的な空間ができあがっていた。
「お館様の神力を石棺に注ぐことで、命様はお目覚めになります」
定範の言葉に頷くと、倭は石棺の前に進み出た。倭が石棺に神力を送ると、その重い蓋がゆっくりと開く。
「命様のお目覚めにございます」
左右に控えていた石棺守の二人が深々と頭を下げる。
最初のコメントを投稿しよう!