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夜伽の儀
突然の初陣から一ヶ月、新たな鬼裂の報もなく平穏な日々が過ぎていた。
命様も理人たちと良く打ち解け、訓練の合間に談笑する姿も見受けられた。
そんな中、東雲キヨは鼻息も荒く世話役・定範の部屋に押し入っていた。
「命様がお目覚めになられて早一月! 命様が現世に馴染まれるまでの配慮と思えばこそ我慢して参りましたが、ここまで一度もお館様のお渡りがないとはどういうことにございますか!?」
「いやいやキヨ殿、少し落ち着かれよ!」
「これが落ち着いておられましょうか!? 東雲家の名にかけて結界の血統を途絶えさせるわけには参りませぬ! お館様には早急に西対へとお渡りいただき『夜伽の儀』を行っていただきます!」
キヨの決死の直談判にとうとう定範が折れた。
「あいわかった。必ずや今宵、お館様には西対へとお渡りいただく」
「しかと頼みましたよ」
キヨはようやく溜飲を下げて、定範の部屋を出ていった。
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