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違和感
父さんはご飯とみそ汁と鮭の塩焼き。母さんと理麻はトーストと目玉焼きだ。
『AI進化研究所』の人たちの話によると、消化機能付きロボットであるため、食事も可能なのだとか。非常に高い技術力を持っているようだ。
ふと、壁掛け時計へ目をやる。午前八時を過ぎたところだった。
平日なので、普段なら父さんは会社へ行っている時間だ。
見た目から何からすべて生前の父さんそのままなので、父さんは会社をクビになることなく、AIロボットとして今でも普通に働いている。
妹の理麻も、今年の春から大学へ通い始めていた。
ゆっくりと朝食を摂っている父さんに、尋ねてみる。
「父さん、もう八時を過ぎてるけど、今日は会社へ行かなくていいのかい?」
父さんが食事の手を止めた。「ああ、今日はいいんだ。今からトシに会わせたい人がいてね」
「僕に会わせたい人?」
すると、示し合わせたかのようにインターホンが鳴った。
母さんが立ち上がる。「ちょうど来たみたいね。私が出迎えてくるわ」
父さんは黙って頷いた。食事の手は止まったままだ。
理麻も、妙に緊張した面持ちで、いつの間にか食べるのをやめている。
AIロボットである家族たちの様子がいつもと違う。
これから何か起こるのだろうか。予測がつかない。
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