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霹靂
「やぁ、久しぶりだね、トシ君」
母さんとともに現れたのは、やや頭髪が薄くなっている五十歳前後の男性と、丸メガネをかけている以外には特にこれといった特徴のない三十歳前後の男性。
忘れもしない、僕が入院していた時に現れた『AI進化研究所』の人たちだ。この人たちのおかげで、ロボットとはいえ、僕は家族たちと一緒に過ごすことができている。
なおこの二人は、上司と部下の関係だと予想される。
僕が軽く会釈をすると、上司がすぐさま父さんたちの方へ首を向ける。
「それではお父さん、お母さん。お願いします」
「は、はい」
父さんも母さんも、明らかに動揺している。
これから何かをさせられるようだ。
父さんが声を震わせながら、こぼすように言葉を吐く。
「いいかい、トシ。今から、父さんが大事な質問をするから、正直に答えて欲しい」
「うん、わかった」
「……父さんと母さんと理麻がAIロボットなのは知ってるよな」
「もちろん」
「……だよな。それで、だな。あの……実は……父さんたちはもう……ロボットとしての寿命を迎えてしまうから、AI進化研究所から来ているこの人たちに回収されてしまうんだ」
「それは、一旦回収されて、また新しく父さんたちの記憶や人格がインプットされたロボットがくる、ってこと?」
「違う。こんなことができるのは一度だけらしいんだ。つまりトシは、我々家族とはもう完全にお別れしないといけないんだ」
「……」
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