真実

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真実

「いきなりこんなことを伝えてしまって、本当に済まない」  父さんがペコリと頭を下げる。  しかし、僕にはどう回答していいのかわからない。  そんな僕の様子を見かねてなのか、父さんが言葉を継ぐ。 「突然のことで混乱しているかもしれないけど……正直な気持ちを教えて欲しいんだ。今、トシはどんな気持ちだい? もう、父さんや母さんや理麻と会えなくなるけど、悲しいとか、寂しいとかって思うかい?」 「いや、まったく」  正直に答えて欲しいと言われたので、正直に答えてみたところ、父さんは顔面蒼白となって固まっていた。  その横で、母さんはさめざめと泣いている。  理麻は、完全に俯いてしまっているからわからないが、小さく嗚咽が聞こえることから泣いていると予想される。  AI進化研究所の上司の方が口を開く。「お父さん、残念ながら駄目だったようですね。お約束通り、トシ君は回収させていただきます」  僕を回収? この人は何を言っているのだろう。  そんな疑問を処理しようとしていると、上司が僕の方へと目を向けてきた。 「トシ君、そろそろ何か気付いているかな」 「……」 「いや、いくらAIロボットの君でも難しいか。最初にしっかり設定してあるからね。自分のことを完全に人間だと思い込むように、と」 「AI? 僕が?」 「そうだ」 「いえ、違います。AIロボットなのは僕の家族の方です。僕は人間ですよ」  上司は、大きくため息をついた後、言いづらそうな様子で語り出した。 「これは、AIをより一層進化させていくために、AIにも感情が生まれるかどうかのテストでね。君はその実験体だったんだよ。一年前の事故で死んだのは、トシ君だけだったんだ。トシ君の父さんも母さんも理麻さんも、全員軽傷だった」  情報の処理が追い付かない。自分の記憶とマッチしない部分が多すぎて、話のつじつまが合わない。  上司が話を続ける。 「すでに、AIロボット同士で家族として一年間人間らしい生活をさせる、という実験は行ったんだが、やはりAIに感情は生まれなかった。だから今度は、実験体以外を全員本物の人間にして試してみることになったんだ。そこで、不幸な事故に遭ってしまったトシ君の情報を得て、ご家族の皆さんに相談してみたんだよ」  父さんが話を継ぐ。
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