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きっかけ
僕の家族は、全員AIロボットだ。
人間なのは僕一人。
こうなってしまったのは、去年に起こった忌まわしい事故のせいだ。
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二十歳の僕と、二つ年下の妹である理麻(りま)、そして両親、家族四人で仲良く車で旅行した去年の冬。
居眠り運転のダンプカーに正面衝突され、僕以外の家族は全員死んでしまった。即死だった。
幸い、僕だけ全治一か月の怪我で済んだものの、家族を一気に失った絶望感から、入院中は常に死ぬことばかり考えていた。
そんな時、『AI進化研究所』と名乗る団体の職員から、こんな提案を受けた。
「君の家族を、全員AIロボットとして復活させてあげようか? 記憶も性格も生前のものをすべて正しくインプットするし、見た目も完全に人間に見えるようにする。どうだい?」
僕は、この提案に一も二もなく飛びついた。
そして退院の日、本当に家族たちがAIロボットとして僕の前に現れた。病院のロビーで僕の退院を待っていてくれたのだ。
どこからどう見ても人間で、声や仕草も、生前の父さん・母さん・理麻のものとまったく変わっていなかった。
僕は、思わず父さんたちに抱きつき、号泣した。
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あれから、もう一年が経った。
平日の朝。
今日もいつも通り、ダイニングテーブルで朝食を摂る僕たち。
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