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星空は優しく私達を見守っている。
眩い光はまるで私達を祝福するように瞬きを、
風に揺られ木々はハーモニーを奏で、
流れる川は私達二人を映し出す。
「貴女をずっと探していました、プリンセス。
きっと、僕達は運命のふたり。
どうか僕のお城に来ていただけませんか。」
差し出されたその手を払い除けて私は彼に背を向け歩き出した。後ろでなんだかぴーちくぱーちく言っているのが聞こえたが鳥のさえずりということにした。プリンセスがプリンスに恋をするなんてストーリー、もうとっくに時代遅れなの、そんなこともわからないで国王になれると思ってるのかな、国民の人達、可哀想。
時を遡ること数時間前、馬に乗ったこの間抜け王子に声をかけられた。「貴女は誰?ここで何をしているの?」と。だから私はこう答えた。「私はヨダソウ王国のプリンセスです。国には内緒でここへ遊びに来たのです、どうか見過ごして頂けませんか?」もちろんまったくの嘘だけど、そういうことにしたら面白いかなーって。間抜け王子はすぐに騙された。「ここは危ない。僕と一緒に行こう!」とドヤ顔で私を馬に乗せた。ラッキー、足痛かったんだよな。
「失礼ですが、ヨダソウ王国とは、どのようなところで?僕はただの村人だから他の国のことをよく知らなくてねぇ。」あの、ひとついいですか、本当の村人は自分のことを村人だなんて言わないと思いますが。そして私、隣の国に住んでるので貴方が王子だってことくらい、知ってますけど。という本音をどうにか口から漏らさないようにしながら、代わりにあまりにも適当な設定の嘘を垂れ流しておいた。自分でも何を言ったか覚えてないので突っ込まれたら終わる。けれど多分、彼は突っ込まないであろう。それに彼にとって私が誰であろうが関係無いのだろうと思った。彼にとって私との出会いはひとときのお遊びなのである。そして、私にとっても。
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