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私は、ショックなことがあると食事が喉を通らなくなる。意外にデリケートにできているのだ。
だから、今日もお弁当を食べる気が起こらなくて、おにぎりをやっとの思いでノロノロと時間をかけて1個食べた。
「あれ? 実緒ちゃん、もうお昼ご飯終わり?」
結子ちゃんに気づかれてしまった。
「あ、うん。昨日の夜、食べすぎちゃって」
「へー、夜ご飯何だったの?」
「えっと……か、唐揚げ」
昨日の夕食が唐揚げだったのは本当だけど、今日の昼食が食べられなくなる程食べたのは嘘だ。
「結子ー。なんかパンとか余ってない?弁当足りなくてさ」
いつものように突然、伊藤晴哉くんが現れた。
「返事わかってるよね? そんなのありません。もしあっても、晴哉にはあげなーい」
辻結子ちゃんとは、2年生になってから仲良くなった。
1学期の始業式の日、後ろの席の結子ちゃんが声をかけてくれた。身長順で並んでも前後だったからよく話すようになった。
明るくて可愛い結子ちゃんが仲良くしてくれて、すごく嬉しい。
結子ちゃんは、今は吹奏楽部だけど小学生の時はバスケットボールをやっていたらしい。
1年生の時に出来た彼氏とは、クラスが離れてしまったそうだ。
伊藤晴哉くんはしょっちゅう結子ちゃんに話しかけている。二人は幼なじみらしい。
私は恋愛のことはわからないけど、伊藤晴哉くんは結子ちゃんのことが好きなのかもしれない、と思う。大した用事がないのに話しかける時の表情が生き生きしている。
結子ちゃんの彼と伊藤晴哉くんは友達だと聞いたけど、気まずかったりはしないのだろうか。
結子ちゃんは休み時間は私といるし、放課後は部活をしている。私は、結子ちゃんの彼氏のことは顔と名前を認識している程度で、ほぼ何も知らない。
疑問は尽きないが、恋とか愛とか私には難しいからあまり考えないようにしている。
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