今はまだ青い心

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「部活頑張ってねー」 放課後、帰宅部の私は吹奏楽部の結子ちゃんに声をかけてから、帰るために廊下を歩いていた。 すると、誰かに後ろから肩を叩かれた。振り返ると伊藤晴哉くんだった。 人通りが少なくて蒸し暑い昇降口へ連れていかれた。何だろう? 伊藤晴哉くんは結子ちゃんにはすごく話しかけてくるけど、私とはほとんど話さない。 こんなの初めてだ。改めて真っ直ぐにまじまじと見つめてしまう。 日に焼けた肌、スッと通った鼻筋、切れ長の目。今気づいたけど、なかなか整った顔立ちなのではないだろうか? 「谷川さん。これあげる」 ボーッとしていた私の前につき出されたのは、バランス栄養食のクッキーだった。骨張った手に握られた袋が金色に輝いている。 「え、なんで?」 さっき、結子ちゃんに「お弁当足りないからパンちょうだい」って言ってたのに。 持ってるなら自分で食べればいいのに。 伊藤晴哉くんはバスケ部なんだから、これからお腹が空くはずだ。 「谷川さん、弁当全然食べてなかったから」 気づかれてたんだ! 伊藤晴哉くんは、クッキーの袋をぐいぐいと私の手に押し付けてきた。 どうしよう。伊藤晴哉くんの顔を見ながら考える。 私はあと20分もすれば家に着くけど、伊藤晴哉くんは、今から部活だ。 気持ちは嬉しいけど、きっとこれは後に食べようと思ってたヤツなんじゃないかな。 あ、そうだ。
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