11人が本棚に入れています
本棚に追加
「部活頑張ってねー」
放課後、帰宅部の私は吹奏楽部の結子ちゃんに声をかけてから、帰るために廊下を歩いていた。
すると、誰かに後ろから肩を叩かれた。振り返ると伊藤晴哉くんだった。
人通りが少なくて蒸し暑い昇降口へ連れていかれた。何だろう?
伊藤晴哉くんは結子ちゃんにはすごく話しかけてくるけど、私とはほとんど話さない。
こんなの初めてだ。改めて真っ直ぐにまじまじと見つめてしまう。
日に焼けた肌、スッと通った鼻筋、切れ長の目。今気づいたけど、なかなか整った顔立ちなのではないだろうか?
「谷川さん。これあげる」
ボーッとしていた私の前につき出されたのは、バランス栄養食のクッキーだった。骨張った手に握られた袋が金色に輝いている。
「え、なんで?」
さっき、結子ちゃんに「お弁当足りないからパンちょうだい」って言ってたのに。
持ってるなら自分で食べればいいのに。
伊藤晴哉くんはバスケ部なんだから、これからお腹が空くはずだ。
「谷川さん、弁当全然食べてなかったから」
気づかれてたんだ!
伊藤晴哉くんは、クッキーの袋をぐいぐいと私の手に押し付けてきた。
どうしよう。伊藤晴哉くんの顔を見ながら考える。
私はあと20分もすれば家に着くけど、伊藤晴哉くんは、今から部活だ。
気持ちは嬉しいけど、きっとこれは後に食べようと思ってたヤツなんじゃないかな。
あ、そうだ。
最初のコメントを投稿しよう!