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どこかに行ってくれと願いながら、どこかに行くべきは本来自分なのだと自覚する。
しかし行く当てなどあるわけもない。
消えてしまいたいと、泣きながら願う。
そんな優斗の傍らに座りこんだまま、友理奈が口を開いた。
「ここからはね、私の独り言。ドロドロした大人の愚痴吐きみたいなものよ。だから聞きたくなければ、寝ちゃっていい。──私ねぇ、三科さんの家にすごく憧れがあったの」
ほんの少し、優斗の目が友理奈を見る。
俯いたままうっすらと笑みを浮かべるその顔は、夢見心地の少女のようにも見えた。
■ □ ■
友理奈は昔から、欲しがりの少女だった。
「お母さん。お母さんが食べてるアイスちょうだい」
「お父さん。あの子がこんなオモチャ持ってたの。私にも買って」
「このカードかわいいなぁ。ねぇ、ダブってるなら一枚ちょうだい」
「この消しゴムめっちゃ消えるよねー。ねぇ、これちょうだいよ。消しゴムくらい困らないでしょ?」
「あの子より私の方がかわいくない? それにあの子、皆に隠してるだけでほかの子と付き合ってるって噂あるんだよ」
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