弐拾伍

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弐拾伍

 墓の掘り出しはあっさりと終わり、組み立てについても、もちろん石の重さもあってものすごく大変だったけど、何事もなく終えることができた。  現代の墓だったらこうはいかなかったと思う。今よりはずっと小ぶりの石で、雨風で色々と削れていたから手をかけやすかったのも大きい。  あの日記帳は、風呂敷に包まれていた木綿の布──たぶん着物らしいそれと一緒に包み直して、おかきの缶に入れて埋めることにした。  そのまま埋めるのは敬意がなさすぎると、優斗が提案したからだ。  缶の中は、お菓子で埋め尽くしてある。 「本当は日記に書かれてた矢立? も一緒に入れたかったけど、見つかってないんだよなぁ」  車で移動中、矢立について賢人さんに聞いてみた。昔の道具で、携帯の筆記具だったらしい。  あの日記が書かれている以上祭壇のあったスペースにあったのは間違いないはずなのに、郷土資料の中では矢立についてなにも書かれていなかった。  木製の物なら、もしかするとゴミだと思われて捨てられたのかもと説明されたけど、百五十年くらいでそこまで形も分からないくらいになるもんなんだろうか。 「名前、どうしようか」 「いい名前がいいよな」
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