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壱
「三科優斗です! うちの家には座敷わらしがいます!」
中学校の統廃合で同じクラスになったとき、優斗は自己紹介の一言で一躍時の人になった。
小学生の頃、怪談集みたいな児童文庫シリーズがブームになっていたことも、理由の一つかもしれない。座敷わらしという言葉から、すぐに妖怪を連想した同級生が多かったのだ。
学生作家を目指している俺も、もちろんその一人だった。
家に幸運を運んでくると言われている妖怪、座敷わらし。そんなものがクラスメイトの家にいるなんて聞けば、ワクワクしないわけがない。
あわよくば自分にも幸運を分けてもらえるかもしれないなんて、ちょっとした下心を持った連中だっていただろう。なにせ中学生だ。ほしいゲームもあったし、小遣いだって増やせるもんなら増やしたかった。その中には、偶然好きな子と二人で組まされたりしたいなんて、ささやかながらも浮ついた願望を持っている人間だっていたわけだ。
しかしそのワクワクも、半年もしないうちになくなってしまう。幸運を運ぶ座敷わらしがいる家に住んでいるはずの優斗が、とんでもなく運が悪いと分かってしまったからだ。
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