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普段、母さんは別に怖い人じゃない。もちろん怒らせると鬼の形相になることも多いけど、そんなのはどの家の母親も同じだと思う。その程度に普通の人だ。
優斗に対してもニコニコ挨拶してるし、なんなら夕食まで食べさせて帰すくらいには気に入ってる。優斗のお母さんとの付き合いはないらしいけど、いつか挨拶にでも行くつもりなのか、どんな人なのかとか、いろいろと優斗から聞いているみたいだ。
だからなにかあるとしたら優斗の家──三科家そのものに対してなのかもしれない。
「よくない思い出とかあるのかな……」
だとしてもあまり聞きたいものじゃないなと息を吐き、優斗の待つ部屋に戻る。部屋のドアを開けたとき目に入った優斗が、試験勉強なんて忘れたようにマンガを読んでいたのに笑ってしまった。
──パタンと音を立てて、かつて書かれた日記を閉じる。今となっては紙も黄ばみ、ページの周囲が随分ボロボロになってしまっていた。
唇を噛みながら読み返していたはずなのに、いつの間にか、重苦しいため息が漏れ落ちる。この日記を読み返すといつも同じだ。そして、いつも同じことを考えてしまう。
泊まりなんてやめておけばよかったと。
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