弐拾伍

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「でも江戸時代の子だからなぁ。今の名前だと慣れないかもしれない」 「太郎とか之助とかつける?」 「あ、それいいかも。でも男か女かも分かんないんだよな」 「じゃあどっちでも使える名前がいいか」  あーだこーだと名前を悩む俺たちを、賢人さんは静かに見ている。  賢人さんも一緒に考えてほしいと言うと、笑って辞退された。 「同年代に供養してもらった方が、この子もきっと嬉しいと思うんだ。家から出られなかったってことは、きっと友だちだっていなかっただろう」 「……そうだね。じゃあ、どっちでも使える名前の例とか教えてもらえない?」 「そうだなぁ。当時の女性名は慣例としてカナ二文字で、植物や長寿を願う鶴や亀なんかの名前がつけられてた。お竹さんとか、お亀さんとか、時代劇でちらっと聞いたことはあるだろ? だから中性的となると難しくなるけど、愛称としては男児も最初の二文字だけで呼ばれていた例もあるから、それを踏まえると──」  うーんと眉間に皺を寄せた賢人さんが、唸りながら名前を挙げていく。 「トク、トヨ、クマ、ヤス、あとはトラとかロク……挙げればキリがなくなるんだろうけど、いざとなるとパッと浮かばないなぁ」
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