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目の下も真っ黒になって、たぶん眠れなかったんだろう。その顔つきに、蒲団の中で呻いていた優斗もギョッとした様子で体を起こした。
「賢人さん、どうしたのその顔!」
「え? ああいや、なんでもないよ。──そんなにひどい顔をしてるかな」
「ひどいなんてもんじゃないよ」
「そうかぁ」
賢人さんは疲れ切った顔で笑って、頭を抱えるように自分の前髪を掴んで黙りこんだあと、静かに口を開いた。
「フリーズドライのリゾットがある。それでも食べようかぁ」
立ち上がりながら、台所の戸棚を開いた賢人さんがいくつかの小袋と、マグカップを取り出す。
寝起きにリゾットなんて、なんだかリッチな感じだと思った。冬になるとよく朝食にお湯で溶くだけのスープを作ったけど、リゾットなら米だし、腹にたまるのが嬉しい。
今はものすごくものすごく腹が減ってるし、と、そこで気づいた。
「……え?」
今は食べちゃいけないって、賢人さんが一番わかってるはずなのに。
優斗の顔が真っ青になっていくのも気にせず、昨日の土汚れが落ちきっていない手が着々と準備を進めていく。
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