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「もう限界だろう? これ以上食べずにいたら、さすがに餓死してしまう。……大輔さんたちからも許可はもらってある。カセットコンロがあるから、それでお湯を沸かそう。保存水はあっちに持っていってしまったけど、雨水でも────」
「いやいや、待って、待ってよ!」
賢人さんの腕に飛びつくように、優斗がその動きを止めた。
「もう、もう大丈夫になったってこと? ちゃんと謝ってお墓も建て直したから、それで……!?」
それならそうと先に言ってほしいけど、賢人さんはなにも言わない。ただリゾットを作ろうとする動きを必死に止めている優斗を見ることもせず、口を閉じたままだ。
なにかあったんだと、それだけで察せてしまう。
泣きそうな顔で、優斗が外に飛び出した。
「っ、優斗どこに……!!」
「帰る!!」
「ダメだ、ここにいなさい! 優斗!!」
しつこい雨が降り続ける中、優斗は三科家に向かって走り出していた。
俺と賢人さんも追うけど全然追いつけず、ぬかるんだ道に足を取られて転ぶ羽目になった。
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