弐拾伍

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「深夜に電話がかかったんだ。──武兄さんたちと同じように、こっちの声は聞こえちゃいないようだったけどね。うわ言のような言葉を呟き、茜さんと優斗、そして君にしきりに謝りながら、やがて叫び始めた」 「謝る? 俺にまで?」 「理由はわからない。それと、優斗」  二人の死体の傍らにしゃがみこんでいた優斗が、ほんの少しだけ顔を上げた。 「……大輔さんは死ぬ直前の電話口で、君のことを頼んでた。食事をとらせてほしい、優斗は大丈夫だからお腹いっぱい食べなさいと、何度も言ってたよ」 「だから俺に、リゾットを食べさせようとしたの」 「そうだ。……墓を戻しても、座敷わらし──いや、三科豊の祟りは治まらなかった。それなら食べても食べなくても、結局……」 「……そうだね」  ゆらりと優斗が立ち上がり、また座り込む。 「優斗」 「ごめん。……少し、ここにいたい」  身を縮めて震えた優斗に、俺たちはなにも言えなかった。  たった数日前、この家に初めて来たときはあんなに騒がしかった広間が、今は静まりかえってる。  始まったばかりの夏休み。ただ遊びに来ただけのはずが、なんでこんな目に遭わなきゃならないんだろう。  優斗と賢人さんから離れ、誰もいない優斗の部屋で。持ち込んだブロッククッキーを口の中に押し込みながら、俺は日記を書いていた。
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