弐拾陸

1/9
前へ
/259ページ
次へ

弐拾陸

 きっと優斗も、もうすぐ死んでしまうんだろう。  賢人さんと俺だけが三科家からはみ出していて、残される。その過程を俺はきちんと書けてるんだろうか。  ここに来ることになった頃は、小説の練習をするためにこの日記を書いていた。だけど今となっては、この日記そのものが事実を伝えるノンフィクション小説として注目されるんじゃないかと、少し期待している。  救出されて三科家全滅の一部始終が世間に知られたら、俺と賢人さんはきっと「時の人」だ。ニュースに取り上げられて、きっとインタビューだって受ける。  もしかしたら殺人犯に疑われるかもしれないけど、一番疑われるのはたぶん、賢人さんだ。義理の家族から冷たくされていたとかで、動機があるとか言われるかもしれない。  だけど俺には、そんな疑いはかからないはずだ。  ここで起こっている座敷わらし、三科豊の祟りについてはなかなか信じてもらえないだろうけど──それでも実話として投稿サイトに公開すれば、注目されて書籍化する可能性はある。  それは正直、少し楽しみだった。  悠斗はいい奴だ。優しくて、おもしろくて、気が合って、大好きだ。
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加