弐拾漆

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 その頃、好奇心に駆られた週刊誌の一つが、優斗に一通の手紙を投函した。 「DNA鑑定の可否について」  最上部に書かれていたこの言葉に、優斗は動揺した。  ──稲本家のリビングに記者が招かれたのは、その数日後のことだ。 「まずはご家族の相次いでの訃報、心からお悔やみ申し上げます。そして弊社の取材を受けてくれて、本当にありがとう。ルポライターの宮野といいます」  恭しく名刺を差し出した男は、ダイニングテーブルの向かい側に座る優斗をじっと見ていた。  目の下に濃いクマを作り、疲れ切った顔をしている少年。人目を避けるように目蓋を伏せていた優斗は、差し出された名刺を見てようやく、ほんの少しだけ顔を上げた。 「三科優斗です。よろしくお願いします」  はっきりとした発音、張りのある声色に、宮野はうなずいてメモを取り出す。 「この取材を受けてもらったということは、優斗くん自身もDNA鑑定に興味を持って──その、自分が本当に三科家の人間であるか疑問を持っている。そう思ってもいいのかな」
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