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弐拾㭭
取材を終えてからも、優斗はしばし呆然とソファに座り込んだままになっていた。
宮野からもたらされた情報が、うまく頭の中で構築できない。
陸が他人に対して攻撃的だったという話すら納得しきれないうちに、さらに自分が正体不明の何者かで、本当は陸こそが三科家の人間だという。
ただでさえ親族を亡くして疲弊し尽くしている脳が、理解を拒んでも仕方がない話だったのかもしれない。
あまりにも、優斗がこれまで持っていた世界からかけ離れすぎている。そのせいかどれもこれも断片的な情報としか思えず、一つに繋がってはくれなかった。
どこも見ていない視界の中に、やがて心配そうな顔が入ってくる。
「優斗くん、大丈夫?」
「……陸の、お母さん……」
口に出して、そうじゃないのかとうなだれる。
陸の両親は優斗が両親だと思っていた二人だ。だから目の前にいる稲本友理奈のことは、陸のお母さんなどと呼ぶべきではない。
しかしそう考えてしまうと、優斗という存在はどこにあるのか。
「あぅ、うう、うぅうううう……!!」
堂々巡りを始める脳内が頭痛を訴え、次第に優斗の表情は耐えがたい苦痛に歪んでいた。
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