弐拾㭭

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 不倫は否定しないまま、クスクスと笑う友理奈の神経が優斗には理解できなかった。  なにを話そうとしているのかも分からない。ただはっきりと言えることは、優斗が友理奈を恐ろしく思い始めていることだけだ。  得体が知れない、と言ったほうがいいのかもしれない。  よく考えてみると、友理奈は三科家で陸が死んだと分かった日から、一度も優斗を責めたことがない。  陸の父親からも表立って責められたことはないが、夜中、優斗を逗留させる辛さを吐き出しているのを耳にしたことくらいはある。友理奈はそのときも、その苦言に同調せず、そっとその愚痴をなぐさめるだけだった。  優斗はそれを友理奈の優しさだと思っていたが、アレは本当に優しさなんていうモノだったんだろうか? 「お互いに伴侶のいる身だったし、偶然同じ時期に妊娠が発覚してね。自然と別れることになった。……だけど大輔くんは、出産直後の私に会いに来てね」  足先から冷えていく感覚がした。  聞きたくないとも思った。なのに言われるまでもなく、想像がついてしまった。  陸の顔と、──陸が書いた日記の一部が頭をよぎっていく。
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