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「知ってた? 優斗くんと陸の誕生日は一日違いなの。しかも茜さんが出血多量で、入院中は子どもと顔を合わせられないかった。……付近に産院が少ないから、このあたりはみんな同じ病院で産むんだけど……大輔くん、私の病室に来て言ったのよ。交換してほしいって」
「子どもを、ですか」
「そう」
満面の笑みだった。
「もちろん私は、産んだ直後からあなたが愛しくてたまらなかった。絶対に苦労させずに育てようと思ったわ。そして大輔くんは茜さんの容態を見て、跡継ぎなら丈夫な子がいいと思ったんでしょうね」
そんな馬鹿な、と思ったけれど、なにも言えなかった。
「うちの主人だってそれなりの稼ぎはあるけれど、結局は中流家庭。あなたになに不自由ない生活をさせてあげられるとは思えなかった。だから、私は大輔くんの提案を受け入れた。あなたを三科家で育ててもらうことにしたのよ。……異常だと思うかもしれないけれど、私なりの愛だった」
優斗はそのまま、呼吸することしかできない。
これが異常だと認識しているのなら、なぜ平然とそんな真似ができたのか。
愛情だと言いながら、なぜマスコミがDNA鑑定を持ち出した直後に、こんな話を打ち明けるのか。
すべてがまったく、意味が分からない。
「陸の、ことは」
「うん?」
「陸のことは、可愛がってなかったんですか。陸はお母さんのこと、いつも色々話してました。だから俺、陸はお母さんのことが好きなんだなと思ってたし、その分きっと愛されてたんだろうって」
「もちろん愛してたし、充分可愛がったと思ってる。だけど……」
友理奈は困ったように眉尻を下げた。
「結局、他人の子なんだもの」
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