弐拾玖(最終話)

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弐拾玖(最終話)

 ──友理奈の告白から数日後。  優斗と陸が本来育つべき家を取り替えられた状況で育成されたことが、週刊誌を中心に報じられた。  ただし大輔と友理奈の不倫の事実は、伏せられたままだ。  これまで世間にとって大輔像は、家父長制が強い旧家でいびられ続けた本家筋の従兄妻を、家庭内で唯一庇っていた優しい男として広まっていた。  しかしこの報道後からその印象は一変し、家系を維持する道具として自分の子を他人の子とすり替える鬼畜として広まった。  しかし、取材した記者が友理奈と大輔との関係を知らないとも思えない。  恐らく稲本家がどこまでも被害者として搾取されてきたのだと印象づけた方が、世間的におもしろいと考えて、あえて伏せられたのだろう。  当然優斗はこの報道に反論したが、世間が不倫の事実を知れば今よりもさらに生活が脅かされることになるはずだと友理奈から忠告され、口を噤むほかなかった。  その結果が、稲本家から出した、三科家全員分の葬式での賑わいだ。  葬儀代は優斗が相続した、三科家全体の資産の中から支払った。
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