弐拾玖(最終話)

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 列席したのは集落の人間が多かったが、地域から出た政治家まで弔問に訪れ、三科家がいかに密かな地域権力を持っていたかを目の当たりにさせた。  それどころか、報道で両家とのかかわりを思い出したかのような野次馬たちの弔問が一番厄介だったと言っていい。  例に挙げるなら、かつて三科家当主と同級生だった、同じ学校に通っていたなどというような、明らかに数十年付き合いのなかった自称関係者たちだ。故人を悼み優斗を労うどころか、事件の概要を事細かに聞き出すために葬儀に出席したようにしか見えなかった。  あまりの振る舞いに陸の父親──正確には優斗の実の父親が激怒し、彼らを追い出したことも、記憶に新しい。  しかしそれでも、ほんの何人かは正しく彼らと交友を持った人物として、優斗を心から労ってくれた。特に大輔のことを、気が弱いが本当に優しい人間だったと語ってくれた数人の男性とは、個人的な連絡先の交換まで行ったほどだ。  そして、確信する。  恐らく友理奈の語った過去は、歪められている。  そもそも陸の日記の中にも、大輔が友理奈を恐れ、疎んでいるような仕草を見せていたことが書かれていた。
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