弐拾玖(最終話)

4/13

46人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
 本来なら、友理奈こそがそのポジションに収まりたいと思うのではないか。  そんな疑問ばかりが頭をよぎっていく。  ──ともあれ、優斗に本当のところなど分かるはずもない。 「陸」  陸の書いていた日記に触れる。 「俺と仲良くなることが、おばさんにほめてもらえる手段だと思ってたのかなぁ。俺との関係が全部嘘だったとは思わないけど──きっとおばさんのこと気にしてた部分だって、たくさんあったんだよな。……陸は、自分がお母さんに大事にしてもらえてないって、いつから気付いてたんだろう」  言いながら、優斗は顔を歪めた。  唇を噛み、俯く。見えるのは自分の足先ばかりだ。  自分の足、だけのはずだった。 「っ!?」  ──優斗に向き合うように、汚れた素足が見える。  泥だらけと言うほどではない。けれど痩せていて小さく、幸の薄い足だった。  全身が強ばって、前を向くこともできない。その足の正体を、足の持ち主を直視することもできない。  前を向けば、直視するのはナニなのか。賢人を始め、三科家の人間が死の直前に目にしていたと思しき座敷わらし、豊なのか。それともほかの、ほかのナニカの足なのか。
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加