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せめてそれを確認しなければと思いながらも、視線は頑なに上がらず、冷や汗と荒い呼吸ばかりが排出されていく。
そんな不甲斐ない自分に心中思いきり罵倒を浴びせる中で、優斗ははたと思い立った。
「……君が豊なら、俺もやっぱり、三科家の一員ってことなのか?」
天啓にも似た気付きだった。
豊を目撃したのは、三科家の中で次に死ぬ人間だけだ。もしこの足の持ち主が真実、豊であるのなら。
やはり優斗は三科家の人間だったということになる。
それに気付き、優斗は泣き出しそうな顔で頬を緩めた。
「だったら、いいなぁ。豊が連れて行くんならきっとみんなと──父さんや母さんと同じところに行けるもんなぁ」
少しだけ深呼吸し、ゆっくりと視線を上げていく。
足の甲から足首、すね、そして膝へと視線を上げようとしたとき、それ以上眼球を動かすことができなくなっていた。
「え、なんっ、なんで?」
見るなと、厳命されているような感覚だった。
しかもその足は、そのまま部屋の外へと歩き出す。しかも部屋の外で立ち止まり、明らかに優斗についてくるよう促していた。
「……なんだよ。俺に、なにか用なのか」
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