弐拾玖(最終話)

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 ころころと笑っている友理奈の言葉が理解できず、優斗はふらついた足で近くの壁に寄りかかった。  まさか陸に物をねだっている? 位牌に向けて? ブランド物のバッグを?   確かに神社でゲームソフトを頼む人間がいないわけじゃない。実際、優斗だってかつてはそんなことをした覚えもある。  ただそれは、相手が神だったからだ。  人間の、しかも身近な人間の、位牌にするような行為じゃない。 「一昨日は陸、お母さんが食べたいなぁって言ったレストランで使える金券をそっとプレゼントしてくれたでしょう? 昨日お母さんこっそりね、ふふ、お買い物ついでに遠出して食事してきたの! 物凄くおいしかったわぁ! 陸は本当にいい子ね」  優斗の表情は、はっきりと恐怖で硬直しきっていた。  友理奈のしたこと、していることが理解できてしまった。  友理奈は自身を、無類の欲しがりだと自負していた。だからこそ望んだのだ。  三科家が有していた、座敷わらしを。
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