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 もちろん大人には大人の思惑もあるんだろうけど、俺にはそのへんもよく理解できないし、興味もない。  ともあれ── 「ちょ、ちょっと待ってて!」  突然の誘いになんだか頭がいっぱいだ。さっき解いていたはずの公式も頭から跡形もなく消え去っている。  とにかく泊まり、しかも長期の泊まりとなれば、こっちだって親に許可をもらわないわけにはいかない。  俺は優斗を部屋に残し、バタバタと音を立てて階段を下りる。  足先がもつれて、派手に転がり落ちそうになるのをこらえながら、なんとか一階にあるダイニングキッチンに駆け込んだ。 「母さん!」 「コラ陸、バタバタ音を立てて走るんじゃないの! 優斗くんに笑われるわよ!」 「今はそういうのいいから! 夏休み、優斗んちに泊まっていい!? 座敷わらしが出るほうの家!」  行儀がどうとか、今はそんな説教をされている場合じゃない。息子の切羽詰まった興奮を察知できないなんて、なんて残念な母親だ。  階段を駆け下りてきただけなのに、興奮しすぎて呼吸が荒い。たぶんキラキラどころかギラギラしているんだろう俺の目を見て、夕食の準備を進めていた母さんはきょとんとまばたいた。 「座敷わらしが出るほうのお家って──山の中の?」
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