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「誰も仕事してないって……じゃあどうやって生活してるんだろ」
「座敷わらしのご加護なんだって」
「へ?」
間抜けな声が上がった。
「座敷わらしのご加護? なにそれ?」
「私もよくは知らないんだけど、お金も食べ物も、座敷わらしの力で手に入るんだって。欲しいものは懸賞の景品でも、他人の恋人でも手に入っちゃうらしいわよ。まぁ、懸賞や他人の恋人は眉ツバものだけどねぇ。あのお家を知っている人達は、ご先祖様がたくさん財産を残してたか、投資とかで不労所得を得てるんじゃないかって話をしてるみたい」
贅沢すぎる話に、口が開いたまま閉まらないんじゃないかと思った。
座敷わらしの加護が本当かどうかは置いておいても、働かなくても親戚全員が暮らしていける財産があるなんてとんでもない状況だ。むしろそれなら座敷わらしの加護だと思った方がまだ納得ができる気がする。まるでマンガの中の存在だ。
一庶民が想像できる程度の金持ち像とは、ちょっと格が違う。
「仲良くしてたら色々面白いかもしれないわよ。アンタ、小学校のときは妖怪のお話とかよく図書室から借りてたでしょ。いつか座敷わらしに会えたりしてね」
そう言ってケラケラと笑った母さんに、俺も心から同意していた。
去年話したそんな日が、ついにきたわけだ。
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