神様のチケット ~秋山ヴィオラは、窓際でまどろむⅡ

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 彼が海外に行くのは、小鳥が悪いんじゃない。  電車が遅れたのは、小鳥が悪いんじゃない。  スマホを落としたのは小鳥の不注意だけど、半ば不可抗力よね。  だけどこの巨大スタジアムを相手に、あたしはどう抗えばいいのかわからない。  どうやって、たった一人の人間を捜し出せばいいの?  その知恵を出せるとしたら……  一人、いる。  ホームズみたいな親友が。  その時、あたしのスマホが振動した。神様の助けだっ! 「乃々ちゃん? やっと駅に着いたわ。乃々ちゃんは最後まで試合を見ていてね。駅前の喫茶で……」 「ヴィオラ、話を聞いて! 電波が切れる前にっ!」 「え……なあに?」 「あなたの力が必要なの。試合終了まで二十分しかないのっ!」  あたしは早口で小鳥の窮状を訴えた。 「どうすれば八万人のスタンドから彼を見つけられるのか。知恵があれば教えてっ!」  しばらくスマホが沈黙する。
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