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>いつも練習を見に来ていた小鳥ちゃんだよね?
>二人で会いたい。大事な話がある。
>返事が欲しい。時間がないんだ。
>やっぱり無視? 僕が嫌いだったかな
……
悲壮感が募る内容に驚いた。最後のメールは昨日の夜。
「明日、日本代表の試合を見てから空港に行きます。迷惑じゃなかったらスタジアムの北ゲートに来てください。一緒に試合を見たい」
>私驚いて、バス乗り継いでここまで来たんです。だけど彼が来なくて。返事のメールも未読だし
小鳥はまた、涙をふく。
その時、轟くような大歓声が聞こえてきた。
「ひょっとして……日本がトライを決めた?」
体を浮かしかけた。だけど小鳥は何も反応しない。
そうか。
小鳥は、この歓声に気づけないんだ。
いま耳が不自由な小鳥の頼りは、あたし一人。
なのに、たかだかラグビーの試合一つを気にするなんて。
あたしはポケットのチケットを握りつぶす。
―小鳥。芦乃原から来る電車が止まったの知ってる?
「え?」と驚いた表情を見せる。やっぱりか。
―彼、遅れて到着したのかも。もう一度、捜そう!
あたしは小鳥の手を取り、スタジアムの通路を走った。
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