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食事の後、レストランを出ると駿河さん先導の元、流れるように最上階へのエレベーターに乗らされた。
そして着いた先がスイートルームでギョッとした。
だけど驚き戸惑う間もなく部屋の中に引きずり込まれ早々にベッドインした。
「沖野さん…!」
「ま、待って」
「待てだなんて……もうこれ以上は──」
「シャ、シャワー、浴びませんか」
「……シャワー」
「はい。とりあえずサッパリとしてから」
「……バスルーム、一緒に入ってくれる?」
「え」
(そう来たか)
本当は時間稼ぎのつもりだった。駿河さんがシャワーを浴びている間にもう一度自分の決めた答えに納得したかった。
交際の返事をするとは言ったけれど、まだ明確な言葉は口に出していない。だけど駿河さんの中ではこうして黙って部屋までついて来た私の返事は『はい』以外ないのだろう。
(まぁ……その通りなんだけれど)
私は駿河さんと付き合う決心をした。
大人で優しくて紳士的。性格、顏、共に良くておまけに老舗デパートの御曹司。
お金持ちだから生活には困らないし、きっと結婚したら一生遊んで暮らして行ける身分になるだろう。
もっとも今ではあまりそういうのがいいとは思わないけれど。
若い時には夢見た玉の輿願望。だけど歳を取って来るとそういうのにはリスクも伴うというのを学んだ。
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