333人が本棚に入れています
本棚に追加
すると明登は私の下でニヤリと勝ち誇ったような表情を浮かべた。
「ふはっ、やっと素直になったな」
「……へ」
「俺のいった通りになっただろう」
「……」
「俺、いったじゃん。『そいつの告白を受けるかどうかはどうでもいい。仮に付き合ったとしてもあんたは俺の方が好きなんだってことを思い知るだけだからな』って」
「!」
それは再会した日に言われた言葉。駿河さんとの件で返事を迷っているようなことを告げると明登は自信満々にそう言った。
(あの時はなんて自信満々ないけ好かない奴なんだろうと思ったけれど……)
「心配するな。あんたのことは俺が幸せにしてやる。俺が一番どん底にいた時を救ってくれたあんたは俺にとっては女神そのものだからな」
「え……」
彼が小声でいった言葉がよく訊き取れなかった。何をいったのだろうと訊く間もなく、明登は私をギュッと抱きしめた。
「いいから、あんたは黙って俺に愛されていなよ。俺はあんた以外の女に興味ないし、俺の全てで幸せにしたいと思う女もあんたしかいない」
「……」
「俺の全てをあんたにやるよ。だからあんたの全ても俺に頂戴」
「~~~」
なんだか無性に泣きたくなった。
先刻から鼻孔をくすぐる明登の甘やかな芳香と蕩けるような言葉。
(どうしよう、私……めちゃくちゃ好きじゃん!)
明登のことがこんなにも好きで、愛していると気がついた今、心も体もスッキリと温かなもので満たされている気がした。
(そうだ、私はずっとこれが欲しかったんだ)
上辺だけの薄っぺらい男性遍歴は、この唯一の温もりと安心感を手に入れた今、木端微塵となって消え去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!