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──翌日、腰を擦りながら売り場へとやって来た
(う゛ぅぅ~~~腰がぁ~~~)
「芳香、おはよう……──って、なぁに、どうしたの?」
「あ……おはよう、春菜。いや、ちょっと……」
先に開店準備をしていた春菜が訝し気に腰を労わっている私を見た。
「あぁ、昨晩は盛り上がっちゃったって感じ?」
「……まぁ……ね」
春菜から冷やかされて蘇る昨夜の熱い夜。あの後、私たちは盛大に盛り上がり濃厚な一夜を過ごした。
明登への気持ちに気が付き、その胸に飛び込む覚悟が出来た私は何もかもが吹っ切れてしまっていた。
大学生だとか、歳下だとか、将来不安だとか、そういった目先の心配は今は見えなくなっていたのだ。
(だってやっぱりいいのよね……明登の体も匂いもテクニックも)
思わずニヤけてしまう。
「うわ、あんた今、思い出し笑いしたでしょう」
「……うん、した」
「何よ何よ、今までにない反応じゃない。何があったか教えなさい!」
「えぇ~~~惚気にしかならないわよ?」
「いいわよ、この際。それでわたしにも幸せのお裾分けしなさいよ」
春菜が言った『幸せのお裾分け』というのは私たちの間では『男を紹介しなさい』の意味になる。
どちらかに彼氏が出来た時、その友だちを紹介しろということなのだけれど……
「駿河さんの友人だったらレベル高そうだし、期待出来るわぁ」
「え……」
(しまった!)
その言葉で気が付いた。春菜は私が惚気ている相手が駿河さんだと思っているのだということに。
(春菜は昨日駿河さんとの間に起こった事を知らないから当然か)
「芳香?」
「あ、えっと……ちょっと訳ありで」
「は? 何いってるの。ひとりじめなんてズルいわよ」
「……」
(これはちゃんと明登とのことを話した方がいいかな)
いつまでも隠しておくこともないと、春菜に明登のことを話そうと思ったのだった。
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