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その日の終業後、春菜を誘って立ち飲み屋に寄っていた。
居酒屋みたいな処だと長居しそうだったので、ごく短時間で済ませられる立ち飲み屋は都合がよかった。
「はぁ?! 8歳下で大学生?!」
「ちょ、声、大きい!」
「はぁ……芳香って犯罪者だったのね」
「人聞きの悪いこと言わないでよ。不可抗力よ、不可抗力」
三年前、高1だった明登と関係を持ったことに春菜は若干の嫌悪感を持ったようだったけれど、最終的には『なんだかドラマか漫画みたいな話だね』と笑って受け入れてくれた。
「しっかし勿体ないね。よかったの? その選択で」
「……」
「駿河さん、なんの文句のつけようもない優良物件だよ? それに引き換え……」
「それは散々考えたの。誰がどう見たって訊いたって駿河さんの方を選ぶべきだっていわれるの、分かっている」
「……」
「でも……気持ちが伴わなかったんだもん。心と体が駿河さんを拒否して明登を受け入れたんだもん」
「……」
「そりゃ歳を取る度に色んな不安要素が押し寄せて来るんだろうなってことは分かっている。でも、でもさ」
「──解ったよ」
「え」
春菜はグラスの中のアルコールをクイッと飲み干してタンッとテーブルに置いた。
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