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「正直な気持ちに突っ走った末の後悔なら後悔にはならないんでしょう?」
「…!」
「歳取ってから『あぁ、やっぱり玉の輿乗ってりゃよかった』って思わないってことでしょう?」
「多分……今はそう思う」
「おい、そこは『うん』ときっぱり言いなさいよ」
「だってやっぱり思うかも知れないよ。……思うだけなら」
「……」
「でも後悔はしないよ。絶対」
「うん、それが訊きたかったんだ」
「春菜」
私なんかの事を親身になって考えてくれる春菜の存在がとてもありがたかった。
「しかし流石に8歳下の彼氏の友だち紹介しろっていうのは無理かぁ」
「ねぇ、いっそのこと駿河さん、狙ってみない?」
「は? なんで、嫌だよ」
「どうして? 玉の輿だよ? それに正真正銘性格いいし」
(うん。本当にいい人だった)
あんな土壇場の状況で交際を断ってさっさとひとり帰ってしまった失礼極まりない私だというのに、駿河さんはあの後──【僕では沖野さんを幸せに出来ないのだと解りました。どうか沖野さんが幸せになれるお相手が見つかりますように】なんてメールまで送ってくれたのだから。
「仮に好かれても芳香を好きだった男にはわたし、手は出さないって決めてんの」
「……春菜」
「あ~あ、幸せになりたぁい」
「……」
こんなにいい女の春菜に『幸せのお裾分け』をしてあげられないのが少し申し訳ないと思ったのだった。
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