317人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
一時間ちょっとの飲み会を終え帰宅の途に就いた。
自宅アパートに着き玄関ドアを開け、明かりを点けながら「ただいま」と言う。勿論返事をしてくれる人はいない。
『バイトが終わったら速攻帰るから』
朝、出かける前に訊いた明登の言葉を反芻する。
「ふぅ~~~」
ペットボトルの水を飲みながらソファに沈み込む。目に入った時計を見るとまだ22時前だった。
(バイト……終わるの0時だったよね)
明登がバイトしているケイスケの店は深夜2時までの営業だったけれど、明登は0時までのシフトだと訊いていた。
(まだ二時間あるなぁ……)
もしかして昨日みたいに早く帰って来ているかも知れないとちょっとだけ期待していたけれど真っ暗な部屋を見て気落ちした。
苦学生だといった明登は昼間大学に通い、夕方から深夜までバイトに勤しんでいる。
休みの日以外の日常は結構すれ違う生活をしているのかも知れない。
(それでも一緒に暮らしている分、幸せ……だよね)
落ちた気持ちを浮上させるべくいい事をばかりを思い浮かべる。
(短い時間でも傍にいられるし、それが一番だよ)
明登と暮らし始めてからときめくような出来事が多かったのを反芻している内に意識が遠のき始めた。
(あぁ……ダメ。ちゃんとメイク落としてお風呂に入って……明日の朝ご飯のお米研いで……)
お米を研ぐ水が流れるイメージのところでプツリと意識が途絶えた。
最初のコメントを投稿しよう!