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明登と再会して一緒に住むようになって三か月が過ぎた。
その間に私は明登の事を少しずつ知ることとなった。
私と明登が初めて路地裏で出会ったあの時、明登は今まで生きて来た人生の中で最低最悪のどん底状態にいた。
未婚の母親とふたりで暮らしていたアパートにはひっきりなしに母親の恋人という男たちが出入りしていた。
いつも母親から『おまえは要らない子』『おまえのせいであたしの人生は狂った』『おまえなんかいなければいいのに』と罵倒されながら生きて来た。
そしてあの日、明登は母親に殺されそうになった。
母親が結婚を望んでいた恋人が母親の元から去って行ったそうで、去った理由というのが明登がいるからという取って付けたようなものだった。
子どもがいるのを知った上で交際を続けていたのに、いざとなると明登を理由にして破局を迎える。
その繰り返しにとうとう母親は自分がフラれる元凶である明登を殺そうとしたそうだ。
そんな母親から逃げ出した直後の明登と出会ったのが私だったのだ。
「俺を必要としてくれる人間なんてこの世の何処にもいないと思っていた。路地裏で生まれて来たことを呪い、絶望していた俺を救ってくれたのが芳香だったんだ」
「……」
いつものように濃厚な夜を過ごし、そろそろ眠りにつこうかという時に打ち明けられた明登の話を涙を流しながら訊いた。
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