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「おい、アイリー、芹沢がなぜこんな事になったのか分かるか。お前は何かしてないか」
教授からの問いに、入り口付近でじっとしていたアイリーは首を動かして目に付いたカメラで室内を撮影し、『こんな事』と言われた状況を確認して答えを返した。
「『こんな事』というのは、体調不良と思われる方の不調の理由ですね? すみませんが、私は行動履歴を記憶していないため、わかりません。ただし、私は人に危害を加えないように設計されています。私は何もしていないと思われます」
役に立たないAIと何度も言われているが、言い訳だけはできるようだ。しかし、人に危害を加えないようになっているとしてもAIが認識しない事故は起こり得る。
「アイリーはある程度の重さの荷物を運ぶことができます。もし何かを運んでいて、そこに紐が絡まっていたら、或いは事故はということもあったかも知れません。その逆に、自殺したあとにアイリーが天井に付いていた紐を外してしまったという可能性もあります。いずれにしても密室の中に死体と記憶を持たないAIしかいなかったんですから、事実は闇の中ですよ」
小林のとても流暢な説明を聞いて、教授はしきりに頷いた。
「そうだな、事実はわからないんだ。自殺というのはあまり公にすることではないし、事実も不明瞭。これは事故としてもらうのが芹沢のためにも一番だ」
教授の中では結論が出た。そして救急や警察に然るべき連絡をしようという話になった。
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