4.探偵は誰だ

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「ハハハハハ、確かにな。本当に見ているなんて都合が良すぎるよな。それはそうさ。こんなものは作り話だからな。僕がそんなストーカーみたいなことを本当にすると思ったのか」 自分の策略が思い通りに決まった快感に酔いしれて、笑いが止まらなくなったとみえて、もはや腹を抱えて床を転げ回る勢いだ。しかし小林を覆う空気は真逆で、暗く(よど)んだままだ。 「彼女がデータを捏造したのはずっと前から知っていました。あんなことをしたのは、研究を成功させて、政府からの研究費の提供や企業から支援金を得ることが目的だったんです。実際にあの論文を発表したあと複数の企業から支援金を受けることができましたし。教授はもうわかったかも知れませんが、研究室で会計を任されていた僕と優愛は協力をして、支援金を着服していたんです。僕も彼女もお金に余裕がありませんでしたし、彼女の実家には借金があって、僕のバイト代もそっちの仕送りに回すほどでしたから」 小林が話しているのにも関わらず、太田はたまに「グヒッ」と堪え切れない笑いを溢していた。
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