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「これは科学の問題じゃないんだ。理屈だけで答えなんて出ないんだよ。だってそうだろう、研究室の中で不正と殺人事件なんて、不味いだろう。小林だって必死になってこの状況をどうにかしようとしてくれてたんだ」
その言葉を聞いても、太田はやはりこの教授はわかっていないように思えた。しかし、芹沢の死の真実を隠すという行為には興味をそそられてしまった。ストーカーなどしていなかったが、ストーカーのように彼女を思う気持ちが僅かにでもあったのは事実であり、そこから生まれた作り話ではあった。
壁際に横たわる芹沢優愛の死んだ姿を見て、自分の中にあったものが純粋な恋心であったと初めて気づいた。
「わかりました。犯人はAIということにしましょう。彼女の死の秘密は守ります」
何を守るというのだ。
彼はただ行く先を失った自分の愛情の捌け口を見つけただけだった。
(了)
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