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「何度も確認するが、この部屋の中で間違いないのか」
そうやって教授に何度も問われると小林もだんだん不安になる。
「おい、中にいるんだろ」
しかし、呼びかけに対して答えたのは芹沢優愛とは別の声だった。
「はい、私はアイリーです。書庫の中にいます」
アイリーは今年度から大学が試験的に導入しているAI搭載の人型ロボットだ。雑談程度の会話と荷物の持ち運びを行ってくれるというのは主な機能で、今のところ勉学の役には立っていないが、理学部棟の中を日夜うろついてマスコットキャラクターとして活躍している。
「アイリー、なんで部屋の中にいるんだ」
教授は驚いてはいるが、ちゃんと”アイリー”と呼びかけてから質問した。今まで芹沢優愛に対して呼びかけていたから反応しなかったが、誰に呼び掛けたかわからないような言葉だったため反応してくれたのだ。普段は文章のはじめに名前を呼んであげれば確実に返事をしてくれる。
「すみません、わたしは自分の行動履歴を記憶していません」
返答してくれたものの、その回答は例に違わず役に立たないものだった。
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